No.121 第三章 黒い力士

| 2011年9月24日

No.121犬之介は油汗と恐ろしさが込み上げてきた。こんな筋肉隆々たる人間離れした怪人に勝てるのだろうか?国安仙人が微笑んで側に来て言った。「見かけはあんなだが、よく見てみなさい。あれは毘沙門天の別の姿です。」「そうは言 […]

No.120 第三章 黒い力士

| 2011年9月23日

No.120「ヤマシモノトネとはいったい何者なのかそろそろ正体を見せてもよかろう」寿船の毘沙門天がゆっくりと直立の姿勢で降下してきて、人格を持った。 真っ黒なその見知らぬ大男は、ふんどし一丁で土俵の脇に降りると、大きく凄 […]

No.119 第二章 七福神寿船

| 2011年9月21日

No.119船は波をけり絶景の富士山を背後にする大山に一路帆を張った。潮風が吹き渡り寿船の一同を心の底から払い清めた。 日も暮れようとした頃、湧き上がる雲の中から声がした。「よくおいでなされた!神聖なる土俵を用意してお待 […]

No.118 第二章 七福神寿船

| 2011年9月19日

No.118「ふん、若造、いい根性をしているが、喜ぶのはまだはやいぞ!」その声に振り向くと、美しく整った眉の下の三白眼がこちらを睨んだ。 「そんなひ弱い事じゃ先がおもいやられるぜ。死んでも勝ってやるって何で言えねんだ。こ […]

No.117 第二章 七福神寿船

| 2011年9月14日

No.117犬之介は大山阿夫利神社の意味を国安仙人に問うた。すると、今まで動かぬ仮想の存在と化して、異界の次元にいた七福神の一人大黒天が、突然に語りかけてきた。「阿夫利神はワシの化身でも有る。相撲の秘策をきっと授けてくれ […]

No.116 第二章 七福神寿船

| 2011年9月8日

No.116「危なかったのう、寅吉殿。船幽霊は私らの一番の弱味をついてくる…。寅吉殿の情の隙間をついてきた。いやはや、だが、もう大丈夫だ。」国安仙人は自分の縄もひょいと解いた。それをみて犬之介と那緒も縄を解いた。 寅吉は […]

No.115 第二章 七福神寿船

| 2011年9月6日

No.115寅吉は深い霧を老婆の霊魂に追いついた。前にまわり、膝下に土下座して叫んだ。「おっ母さん!俺だ、何処へ行くんだ。ずっとずっと音信不通にしていて悪かった…。おっ母さん、死んだのか?放って置いて悪かった!寂しかった […]

No.114 第二章 七福神寿船

| 2011年9月5日

No.114寅吉の前の宙に船幽霊どもが浮いていた。寅吉の魂は天空に吸い込まれてゆく無数の人魂に念じ掛け、一人一人を慰めた。「おおっ!なんと惨めなことよ!死んだ子は戻らぬ。おのれが死んだことも分からずに、探し求める母心は虚 […]

No.113 第二章 七福神寿船

| 2011年9月3日

No.113心の底から冷たさが襲ってきた。えもいわれぬ歌声が聴こえてきたのだ。 海で共に亡くなった子どもらを呼ぶ母の霊どもの声だ。いったいどうしたというのか、大きな海難事故か津波で亡くなった者の霊達なのだろうか。無数の幽 […]