No.129 第三章 黒い力士

| 2011年10月29日

No.129相撲は終わってしまえばそれまでである。黒い力士はのっそり起き上がると、自分のおごりが原因だった事に気づき、バツが悪そうに言った。 「本来貴様などに俺が負ける訳がない、そう思ったのが敗因だ。おごりこそが俺の最大 […]

No.128 第三章 黒い力士

| 2011年10月27日

No.128同体かに見えた瞬間、犬之介の体は十分にしなり倒れずにいた。黒い力士の巨体は、遥か土俵を割ってぶち飛んでいた。 「凄いうっちゃりだ!」寅吉が思わず叫んだ。「微妙…、ワシは居反りを取る。」国安仙人は目を細めた。 […]

No.127 第三章 黒い力士

| 2011年10月20日

No.127まわしを引きつけると、ぐぐっと身体が相手にめり込む感じがした。目の前は肉に覆われて窒息状態になった。犬之介は、なおもまわしを引き、死んでもこのまわしだけは離すまいと堪えた。 しかし巨漢の前進に、ズルズルと土俵 […]

No.126 第三章 黒い力士

| 2011年10月14日

No.126軍配が返った…。目の前の黒い小山のような塊はゆっくりと立ち上がり、凶暴な目と歯だけが犬之介に襲い掛かってきた。 その不気味さは、立ち合いを当たる前から絶体絶命の終わりのドラマにすり替えていた。…ぶち当たる前に […]

No.125 第三章 黒い力士

| 2011年10月12日

No.125両者、仕切りを重ね凄まじく睨み合ううち、犬之介の怒りは白熱し純化して武者震いとなり、思わぬほど遠くまでも空気を震撼させた。 一歩も引けを取らぬその気迫はますます弾けるような猛烈な気魂となり、地獄の亡者どもまで […]

No.124 弟三章 黒い力士

| 2011年10月10日

No.124深い仕切りに入り、相手の目と火花の散る視線を交わし、犬之介は突然として分かった。なぜ太刀が夢枕に現れたのかを…。…もともとの持ち主から略奪されている…。太刀は魂を持つと言われている…。 太刀は略奪され、守護霊 […]

No.123 弟三章 黒い力士

| 2011年10月5日

No.123犬之介は凛々しく褌一丁の姿だ。つややかな肌は絞まって美しく、アラバスターのギリシャ彫像のようだ。大きく四股を踏みならす姿に、神々のため息がもれた。 黒い力士はそれを鼻で笑い、土俵が割れんばかり地鳴りのする巨大 […]

No.122 弟三章 黒い力士

| 2011年10月1日

No.122「まてまて、貴様なぜそのような昔の因縁などをほじくる。関係無いことだ。」黒い力士は、犬之介と国安仙人の前に巨岩のように立ちはだかり、仙人の肩を突いた。するとどういうわけか、その突いた手が割れた煉瓦のごとく肩か […]