ロビ木琴のインプロヴィゼーション

 

 

ロビの木琴を演奏する奏者が、現地では「アェ〜」、「エ〜」などと、演奏中に声を発するのをご存知だろうか?
それも自然に漏れ出る声で、これの不思議なのは演奏と必ずしも同期したものではないのである。
グレン・グールドやオスカー・ピーターソンが、演奏中に声を発するのとは違い、曲の旋律などとは無関係な声である。
長年、私にはこの声が謎であった。今迄、私も、同様に演奏中に声を出してきたが、音楽的な範囲を抜けず、演奏する意識に同期したものであった。
しかし、最近になって分かってきたのは、「アェ〜」、「エ〜」などの母音発音を自然に任せ出していると、演奏の主体者が手の反射系に移行してゆき、難なく勝手に軽くフレーズを弾け、まるで自転車を自由に意識せず乗れるようになるのに似た状態になるのである。これは慣れ親しんだ絵筆を手に入れたも同様で、直接異次元の詩とインスピレーションの世界に乗り出すこととなる。
一種の瞑想状態なのか、演奏状態は軽やかで上昇感を伴うものである。

ここまで一朝一夕には生中でない連続した修練を伴うが、民族伝統音楽を超えるロビの木琴の自由なインプロヴィゼーションの真髄は、どうもこのあたりにあると私は思っている。
フォルムから根源を発する私のインプロヴィゼーションの真意もここにある。

2012/7/1  Chancey