Posted By chancey on 2012年4月22日
No.42
すると群衆からどよめきが起こった、一発の銃声がしたからだ…。
「取り込み中に失礼する!この騒ぎのもとはわれわれだ。われわれはまもなくここを出て行く。長老には迷惑を掛けすまない。この背の高い連中はワニの部族と言うが、こちらに危害を加えるなら、このとおり銃で防衛のため戦うぞ!」隊長のアントワーヌが立ち上がり三本筋の男の前に出た。
「アントワーヌ、せっかくの調停を無にしてはまずいな。ワニを撃ち殺したのはこちらが悪い。ここは任せよう。」医者のジジが割って入った。するとアサビコが言った。
「私にさせて下さい!ワニの魂を私に降ろして復活させて下さい。通してくれれば何もしないとワニ神に約束した私に責任がある。私の命を差し出します。」
「ほう、お前は若いが勇気が有るな。ワニになっても構わんというのか?」コントンボリがびっくりしたように言った。
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Posted By chancey on 2012年4月21日
No.41
「まあ、待て待て、俺様の出番が無くなるじゃないか。少し待ちなさい。もう少し高貴な登場しようと思ったのにしょうがねえな、俺はコントンボリだ。」
そう言うと、祭壇のボーリ像に供えられていた奇妙な土偶が変化して人の形になった。
杖の巫女が声を張り上げた。
「アマナ様はこう言っておられる、コントンボリの言うことは半分も信用できない。
ワニ神よ、ボーリ様が聞き届けてくれない以上、アマナ様は殺された日嗣の御子の魂を、黄泉の国にて誰かに憑依させ復活させると言っておられる。益の無い報復は思いとどまりなさい。」
「む、なんと阿呆な!俺なら白黒二頭のヤギの生贄と、人間の子供一人の犠牲でいい。どうだ?さすればすべて丸く収めようぞ!」
中庭は、異形の者達の喧噪と木琴の音で溢れた。
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Posted By chancey on 2012年4月19日
No.40
中庭の入り口から、ジナベという流暢な歌の吟唱が高らかになり、古風な伝統服を纏った背の異様に高い男たちが数人、長い杖を突き突き入ってきた。坊主頭に切れ長の鋭い目つきは、狩猟に長けた部族の者どもだと一目で分かった。
「おぬしらの中の白い人をワシらに渡してもらおうか!」先頭の、頬に三筋に傷のある男が辺りを見回し言った。
「ほう、何じゃね。この白い人たちのことかね?それなら断る。精霊との約束は守らねばならないのでな。」
長老は落ち着いて返答した。
「ワ、ワシらの日嗣の御子を白い人に殺された。その報復に白い人全員の魂貰いに来た。じ、邪魔すると為にならん。」三本筋の男は少しどもって言った。
「あんたら、ワニ神様じゃな?」
長老は目玉をギョロつかせて大声を出すと背後の祭壇の方からも声がした。
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Posted By chancey on 2012年4月17日
No.39
「何を生意気な、ボープラ様の出るまでも及ばぬ!おれがワニ神に取りなしてやる。おれを祝祭すればよい。」
「コントンボリ、おまえの力は知れている。祝祭してもよいがワニ神は納得しない。おまえでは必ず七人とも救済できまい。」
「気の優しいおれもさすがに怒るぞ!救ってやるとも!祝祭を始めなさい。おれなら祝祭を半月にサービスしておく。しかも現物払いでもよいぞ!おまえら人間ごときのくだらん願いのすべてを誠意のディスカウントだ!今そこに行くから待っておれ!」
そう言い終わりアマナの巫女は正気を取り戻した。
それと同時に、子供らが口々に、村に祀られているボーリ像を指差した!指差す先には光彩が現れ、予兆に満ちた光の乱舞が起こった。
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Posted By chancey on 2012年4月14日
No.38
ささっと場が開き、しばらく激しいリズムに乗り踊ると、すっと再びもとに戻る。土煙を上げて次の女が場に進入して来る。三倍速の激しい痙攣のリズムに歓喜の表情を見せ踊ったかと思うと、すっと場から消える。太鼓を打ち叩く男は煽りの激しいリズムをそこで添加する…。
アマナの斜め後ろの女が、急にぐったり白目を剥き何者かが憑依してきた。
「ウーム!おれは、ボーリ様の眷属コントンボリだ!場合によっては希望を叶えてやらんでも無い。」
声だけが女の口から太く言う。
太鼓は、たき付けるのを止め、木琴は激しい高低を繰り返し、ぴたりと止まった。ゆるやかにアマナの口が動き、その言葉を杖の巫女が大声で喋った。
「コントンボリよ、ボープラに伝えよ。ワニ神に命を見込まれた白人の延命を願うぞ!ここに今日より三ヶ月の祝祭を催す。」
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Posted By chancey on 2012年4月13日
No.37
「われわれのことで、そこまで迷惑は掛けられない。救援が来るまで一ヵ月も掛からないだろう。それよりも、川を下る船はないか?大きな町まで出ればなんとかなる。」
アントワーヌは地図を指し答えた。
「隊長どの、ワニ神をみくびっては大変なこととなる。アマナの言葉とおりボーリに願う以外ない。」
そのうちアマナは木琴の音に感応して、神懸かりとなり、周囲の女達はアマナを支えながらも、あるものは急速に入信状態に落ち入った。
木琴に、いつの間にか太鼓とベルも加わり、取り巻いていた群衆は興奮状態になって踊りだした。その場は喧噪と神聖が入り交じる祝祭と化した。
踊る輪は中庭から溢れて、音を聞き付けた人が仕事を打ち捨てて集まって来た。木琴と太鼓はますます調子を上げ、すべてが、浮揚感に、大きなうねりのようになった。
白い衣装を回転させた巫女集団のひとりが、何者かに突然取り憑かれ走り出た。
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Posted By chancey on 2012年4月9日
No.36
そのうち辺りが騒がしくなって、真っ白な衣装を纏った一団が、風のように入って来た。先頭の女の肩に引かれて、百合のような美しさを放つ盲目の女が中心にいる。十人ほどの女達を、子供と群衆が後を取り巻き、庭の奥の長老の前に来た。
「やあ、アマナ、お前様の言ったとおりじゃな。ここの連中は、身から出た錆とはいえ、仲間も船も失い難儀しておる…。」
すると、杖代わりをしている女が何やらアマナから耳打ちを受け、答えた。
「アマナ様は同情しておられる。こう言ってます。ワニ族は大事な御子を殺され、たいそうな怒りでいます。強い復讐心は収まっていません。ボーリの精霊に救命を願いなさい。」
「おお、ボーリに願うのか?それには木琴とダンスと生贄が欠かせんな。それも少なくとも三ヵ月は必要じゃ。」
長老は、大きく口を開き煙草の煙を吐いた。木琴を弾いていた男が、ゆっくりと手を止めると天を見上げた。
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Posted By chancey on 2012年4月7日
No.35
そのとき中庭の大きな木の陰で、男が木琴を始めた。明るく深い音色は、軽やかに木漏れ日の陰を揺れて転がった。
アサビコは縁台に寝転んでなにげなく聴いていた。聴いていると不運を忘れて、まあいいじゃないかという気分になってくるのはどうしたことだろう…?
隣のジジも、やけくそか、微睡んでいた。
アントワーヌ他、二、三の隊員は、庭の片隅で、必死に地図に何か書き付け顔を突き合わせ会議をしている。入り口付近では、発砲した男が女をからかっていた。
木琴の調子がゆっくりしたものから速いものに変わり、俄に場が活気づいてきた。
庭には、髪結いやら、行商やら、繕い屋などが、入れ替わり立ち替わりやってくる。
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Posted By chancey on 2012年4月5日
No.34
老人は村の長老で、自らの自宅に加え、中庭付きの藁葺きの家を提供してくれた。
「あんたらが来るのは分っていたよ。困った時はお互いさまじゃ。それにしてもアマナの予言のなんと当たることじゃろうて…。水の苦難の者が外からやってくるとな。あたま数までもぴったり七じゃ!」
「そのアマナとは誰でしょう?」
アントワーヌが聞いた。
「アマナは不思議な娘だ…。アマナには凄い精霊が宿っている。目は全く瞑れて見えんで、あたまもいっちまってるように見えるんじゃが、女だけの集団を率いてこの辺りを巡っている。女は黄泉国から来たと言っている…。こうしてわれわれに占じたことを述べて皆の糧を得ているが、ここの者達ではなかろう。」
長老は、抜けた歯の隙間に煙草を挿み、一服つけて言った。
「そのうちここにも、やてくるじゃろうて…。」
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Posted By chancey on 2012年4月2日
No.33
陸には薄汚い伝統服の老人がひとり岩に腰を下ろしてこの光景の一部始終を眺めていた。
「むむ、悪いのは白人だな。ワニは川の神様だ。粗末で野蛮な行いは、ここでは慎まねばならん。」泳ぎついた隊長や、ジジとアサビコに向かって言った。発砲した男は隊長に胸ぐらを絞められ、言い訳をした。
「俺が悪いわけではない、こんな日本人の小僧ごときに何ができるというのです。ワニは凶暴だ、それを教えたかっただけです。俺のせいじゃ無い!こんな事態は想定外だ。」
「きさまのようなやつこそ想定外だ!今すぐクビだ!」
アントワーヌが怒鳴った。
機材と食料と人員を失った探検隊は、老人の村に入り救援を待つことになった。
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